山田耕作童謡100曲集

 30 雀と鶯   三木 露風 作詞   

 

雀なきだす 春日和 朝ははよから 鳴く雀

 都の家の 近くにて 春知りがほに とんでゐる

 

雀なきだす うらゝかの けふはほんとに よい天気

 わたしはひとり 遊んでる 雀を友に 唄はうか

 

籠に飼はれた 鶯が 折からまたも なきだした

 籠に飼はれた 鶯よ 遠くの谷は どうであろ

 

都に来ては 飼はれたが 山のふるさと どうであろ

 白い桜が 咲いている 霞も峯に 曳いている

 

天気つゞきの 春が来て 空はのどかに あたゝかい

 私はひとり 家にいて 又も雀の 聲を聞く

 

 

 耕作百言

 眞の詩の作曲に際して言葉の面に写っているもののみを

音楽に翻訳するのは、本来、立体的、象徴的なものである

詩を強ひて平面化、散文化してしまふことになる。

 丁度水の流れの表面のみを見て、大きく深く流れて行く

水を、硬い奥行きのない鏡のやうに考へるのと同じである。