山田耕作童謡100曲集

10 雀追い 北原 白秋                                  

安寿あんじゅこひしや ほうやれほ 

厨子王ずしおうこひしや ほうやれほ

 ここは荒海 佐渡ヶ島

  雑太さわたの庄の里はづれ 

 

安寿こひしや ほうやれほ

厨子王こひしや ほうやれほ

 二人が母さま ぼろぎもの

  めんめ めくらで竿持って

 

安寿こひしや ほうやれほ

厨子王こひしや ほうやれほ

 追っても追ってもむら雀

  干した蓆の粟のうへ

 

安寿こひしや ほうやれほ

厨子王こひしや ほうやれほ

 遠い薄日に ほうやれほ

  雀追い追い ほうやれほ

 

 耕作百言

 転調はこれを内容的に見れば、本流が必然の経路を辿って

枝流に流入した状態をいふ。その経路は嬰変によって譜面に

現はされる。

 嬰変が本位記号によって直ちに復活せられる場合には

それを転調といふことが出来ない。

この場合には、音の本流が枝流に流れ入ったのではなく

本流が両岸の屈折や河床の凹凸によって一時いつもと異なった

波状を見せたまでのことである。

 これに反して完全な転調に於いては、本位記号によって直ぐ

嬰変を復活せしむることが不可能である。

即ち、水が全然枝流の方に入ったのである。