山田耕作童謡100曲集

雀のお宿   北原 白秋 作詞

雀のお宿は山蔭やまかげに 小薮こやぶがこんもり ほそながれ

  下手しもて丸木まるきの橋ひとつ

雀のおやどはもう寒い だアれか来るかと出て見れど

  遠くぢゃ ちりぢり 渡り鳥

雀のおやどはわびしいに ときたまはた織るをさの音

  野山にとんから響きます

雀のおやどに日が暮れりゃ ちらちらあかりもともるけど

  夜更よふけ時雨しぐれの音ばかり

 

耕筰百言

 歌を唄ふといふことは、たゞ心のない独唱家がいたづら

声帯のどをころがすとは違ひます。たゞ単なる技巧を弄する

と言ふことは本統の道ではありません。歌を唄ふといふこ

とは、とりもなほさず、美しく織り出されたメロディの流

れに乗っておはなしをすることです。

 美しく、正しくはなさうためには、まづ、その歌の心を

知らなければなりません。いくたびも、いくたびも、詩人

の唄ひいでた詩を繰返し繰返し読まなければなりません。