逢ひたさ見たさに こはさをわすれ 暗い夜道をたヾ一人

  逢ひに来たのに何故出て逢はぬ 僕の呼ぶ聲忘れたか         

貴郎の呼ぶ聲忘れはせぬが 出るに出られぬ籠の鳥

  籠の鳥でも智慧ある鳥は 人目忍んで逢ひに来る  

人目を忍べば世間の人は 怪しい乙女と指さゝん

  怪しい女と指さゝれても まごころ込めた仲ぢゃもの

指をさゝれちゃ困るよ私 だから私は籠の鳥

  世間の人よ笑はヾ笑へ 共に戀した仲ぢゃもの

共に戀した二人が仲も 今は逢ふさへまゝならぬ

  まゝにならぬは浮世の定め 無理に逢ふのが戀ぢゃもの

逢ふて話して別れる時は いつも涙が落ちてくる

  落ちる涙は誠か嘘か 女心はわからない

嘘に涙は出されぬものを ほんに悲しい籠の鳥