46 あわて床屋 北原 白秋
春は 早うから 川辺の葦に
蟹が店出し床屋でござる
チョッキン チョッキン チョッキンナ
小蟹ブツブツ シャボンを溶かし
親父自慢で鋏を鳴らす
チョッキン チョッキン チョッキンナ
そこへ兎がお客にござる
どうぞ急いで髪刈っておくれ
チョッキン チョッキン チョッキンナ
兎ァ 気がせく 蟹ァ 慌てるし
早く早くと 客ァ詰めこむし
チョッキン チョッキン チョッキンナ
邪魔なお耳はピョコピョコするし
そこで慌てて チョンと切りおとす
チョッキン チョッキン チョッキンナ
兎ァ怒るし 蟹ァ恥ょかくし
仕方なくなく 穴へと逃げる
チョッキン チョッキン チョッキンナ
仕方なくなく 穴へと逃げる
チョッキン チョッキン チョッキンナ
耕作百言
音色に於ける音の特質は、明暗及びその何れにも
属さない中性色の三種に別けることが出来る。