ロベルト.シューマン

 牢獄ひとやい出て国へ 還る兵士二人 

  家路近づきし頃 傷たみし心の

   国の便りと聞きしは 

『フランス遂に敗れ 大軍崩れ今ははた

  皇帝捕らわれぬ』と 

 悲しき便り聞きて 涙せし二人 

 語りつ『死は近し かくも傷うづくは』

 答えつ『事止みぬ 死も今いとはじ

 されども妻子を如何になすべき

 憂ひぞ妻子を 我等例へ逝くも

 永らふるすべあらん 皇帝捕はれしを』


 『我が語るを聴け 我今死せば

   わがかばねたづさ へてフランスへ埋めよ 

  名誉の十字をば 我が胸に掛け

   銃を我が腕に 剣を腰に 

  斯くて我墓より み国を護らん

    矢叫やたけびや砲音つつおとの またも響く日まで

 やがて皇帝還りて 我が墓の上に

  軍勢つどふ時 墓をい出て我は起たん

   我が皇帝のために』